女将 髙橋 和江
以前の私は襦袢の背中に紐を直接縫い付ける方法でえり元を決めていました。
その方法はずっと前に着付け習った先生がなさっていた方法で、その紐はえもんを止めるだけに使うので、身八ツ口から中に通してまず止めてしまうというものでした。
紐は自分の体に合わせ作るのですが長さを調節し、その縫い付け巾を広めに付けることでとってもきれいにえり元が決まるので、私自身は既製品のえもん抜きを使用していませんでした。
いうのも、それまでさまざまなえもん抜きを使用いたしましたが、満足のいく商品には出会えなかったからです。従来からの紐を通す形のえもん抜きは私の使い方が悪いせいかなかなかしっかりとは止まってくれない上に、後ろの衿だけが三角に抜けてしまうのでえり元の形も整わない気がしたのです。
それでもお客様のお仕立てにはそのえもん抜きを付ける、ということへの罪悪感も拭えず、釈然としないままの日々…そんなある日、ふと気づいたのです。襦袢に縫い付けているえもん抜きに直接紐を付けたらどうだろうと。三角に衿が抜けないように幅も広くしてみたら…、と。
その思いつきは見事的中!何度も試作を繰り返し、今のえもん抜き巾、長さ、紐の位置、角度にたどり着きました。